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藤掛幸智

藤掛幸智 新作展「Vestige III 」

2021 4/8(Thu) - 4/24(Sat)

日、月曜日休廊 午前11 時~午後6 時 / 最終日は午後4 時まで
作家在廊日: 4月8日(木) ~ 4月10日(土)

A LIGHT HOUSE CALLED KANATA A LIGHT HOUSE CALLED KANATA

Vestige III – Sachi Fujikake

最初は作家とは露知らず、いつものように、ギャラリーを訪れた女性の来客と何気なく立ち話をした。それ は 2012 年 9 月、瀬戸の長江重和さんの個展三日目の昼下がりであったと記憶する。何時、何処で誰に会うか 分からない。都会に住む人は一日に無数の他人と行き交い、通勤時や街角で出会いと別れを繰り返す。同じく、 毎年 100 人ほどの作家がカナタを訪れ、作家も作品も満天の星のよう。

数分後。その颯爽とした女性より笑顔で手渡された名刺に写る作品写真を見て、思わず唸った。ゆったりと 流れる夏雲のように、淡くも優しく揺らぐ不思議なあの曲線に目を奪われてから早 9 年。名古屋の藤掛幸智 さんとの長いお付き合いは、そんなひょんな事から始まった。

藤掛作品はサルバドール・ダリの溶けていく時計のように、硬い筈のガラスが柔らかく歪み、撓み、萎む。 その造形の秘密とは、藤掛さんが生み出した独創的な技法にある。異なる色の板ガラスに模様をサンドブラ ストした後、その板を窯の中で立方体として組み立てる。そしてその立方体を大胆にも炉から抜き取り、吹 きガラスのように息を吹き込み、作品は縮んだり、伸びたり、やがて「生命」を宿す。仕舞いに自身の手で 作品を掴み、捻り、ワイルドに曲げる藤掛さん。華奢な方なだけに、その迷い無き破天荒な即興芸に今も驚 かされるばかり。

硬い物質が柔らかなものへと変わる様、その美の名残を現す藤掛さんの代表作「Vestige(名残)」。吹きガラ スは容易ではなく、決して一人の力では成し得ない造形でもある。そのため、実は藤掛さんの家族は総出で 制作を手伝われる事もしばし。暑い日も寒い日も、一家が一つのチームとなり、結束してリーダーである藤 掛さんの指示に従い、一つ一つの作品に「いのち」を吹き込む。

なるほど。藤掛さんの作品は美の名残という抽象的な形を現しているだけではない。作品から溢れるのは、「慈 しみ」に似た柔らかな光。そう。藤掛さんのご家族の温もりが確かな光となり、白いガラスから零れ落ち、 周りをやさしく照らす。作品の中に吹き込まれた美の名残とは、人と人を繋ぐ体温でもある事に気付く。

存在しえないものがそこに存在する不思議。まるで時空がちぎれ、世界は揺らぎ、その光に息を呑む人々。 藤掛作品の不思議な引力が結びとなり、人と人が繋がるように。2012 年 9 月のあの昼下がりのように。

ア・ライトハウス・カナタ  オーナー 青山 和平

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