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The Skies Above – 中田真裕の蒟醤

2024 2/8 (thu) - 2/24 (sat)

日曜・月曜・祝日休廊
午前11時~午後6時 最終日は午後4時まで
作家在廊日:2月8日(木)〜 2月10日(土)

A LIGHT HOUSE CALLED KANATA A LIGHT HOUSE CALLED KANATA

出会いは突然訪れるものだ。

残暑厳しい2016年9月初旬。香川県とは特段縁もゆかりも無い私であったが、ある日、県庁の文化振興課より、私を特別講師として高松へ招きたいという書状が届いたのだ。目を凝らしてみると、「香川県漆芸研究所」たるところが高松にあるようで、その施設の研修生に対し、海外アートフェアの近況や傾向の情報を共有して欲しいという、極めて稀有なご依頼であった。微かな好奇心が芽生えた。

香川漆芸発展の為、遥か海外のアートフェアまで視野を広げている県庁職員の方々。さぞかし先見の明のある方々では無いだろうか。そのリベラルとも言える柔軟な考え方に惹かれ、ゲストスピーカーの役を引き受ける事にした。なにせ、私を県庁に推薦した人物こそ、予てより親交のあるギャラリストで、憧れの存在でもある小山登美夫さんであったからだ。断る理由も無く、無心で高松を訪れる事にした。そして香川県漆芸研究所の講義にて、研修生のなかで一際目立つ存在こそ、デビュー前の中田真裕さんであった。

講義が順調に進むなか、中田さんの眼光もさる事ながら、その質問も誰よりも鋭く、その大きな目でレクチャーを聴き込む姿は今なお、鮮明に覚えている。講義が終わり、作品の品評会へと移った途端、その「鋭さ」の所以が分かった。中田さんの作品は他に追随を許さないほど、美しかった。真似事でない意匠。色彩感覚。そして佇む品性。当時の研修生のなかでも、一際「モノの真」が伝わる中田作品に、思わず息を呑んだ。

中田さんは香川の伝統的技法である「蒟醤(きんま)」を自由自在に操り、自己を現わすのだ。漆上に彫りを入れ、多種多様な漆色を象嵌し、その繰り返しにより作品が形成される。言うまでも無く、極めて困難な技法であり、時間が掛かる。その超絶技法に敢えて挑む中田さんの気骨に感心した。聞くところによると、中田さんはある製薬会社で正社員として長年活躍されていたようだ。その安寧な生活を投げ捨て、脱サラしてまでも、漆芸の道を選ばれたその勇断にも、感動すら覚えた。だからこそ、彼女の作品から放たれる「本気度」が違う気がした。退路を絶つ事の凄みは、背水を経験した者にしか分からないものだ。私には分かる。そして、中田さんも同じくだ。

才能の片鱗は見せつつも、中田さんの当時の造形力は現在と比べて、まだまだ発展途上であった。しかし、助言を素直に聞き入れ、すぐに実行される中田さん。研究所を卒業されても、年に数回ほどのペースでギャラリーを訪れ、助言を活かした新作を持参し、また意見を聞き入れ、次回へまたまた活かす。回を重ねる度に、中田作品の進化の速さとその度合いが増した。そして、みるみる内に、LOEWE Craft Awardのファイナリストにノミネイトされたり、美術館に収蔵されたり、その活躍のスピードが作品の進化のスピードと一致した。近年は母にもなった中田さん。前途洋々とは、まさにこの事である。

あの時高松で出会った研修生が、8 年近くの月日を経て、ようやくカナタで個展デビューする事になった。いつ、どこで、誰に会うか分からない。だからこそ、これからも人と出会える機会だけでなく、人と出会える幸せそのものを、大切にしてまいりたいと願う。なおさら、中田さんの初カナタ個展の喜びはひとしおである。

ア・ライトハウス・カナタ

青山 和平

 

 

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