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三原研「醒」

2020 9/5 (Sat) - 9/29 (Tue)

日、月曜日休廊
午前11時~午後6時  最終日は午後4時まで

A LIGHT HOUSE CALLED KANATA A LIGHT HOUSE CALLED KANATA

三原研 新作展「醒」

水の如し、時は無窮なり。川は海へ、海は空へ、雨は大地へ。そして 雪解けとともに、川はまた海へ帰る。出雲の三原研さんの作品には、 この自然の摂理とも云える普遍性が底流に流れ、その静かな佇まいの 中で過去と未来が一つとなる。

「ゆく河の流れは絶えずして、もとの水にあらず」とあるギリシャの哲 学者は云った。

過去の自分はもはや現在の自分でもなく、未来の自分でもない。時の 中で人は変わり、三原さんも変わる。そして三原作品も同じく、季節 の移ろいに似た摂理のなかで変化に富む。変化は必然であり、何より も「自然」なこと。ただ、その稜線に内在する精神性に変わりは無い。 10 年前の三原作品も、10 年後の三原作品も、そして今、目前に広がる 15 点の新たな景色も、一目で三原さんの作品であると分かる。それも そのはず。作品こそ、三原さんの心を映す水鏡である。

この度はじめて発表となる新シリーズ「醒」までの旅路を辿ることにしよう。

2007 年〜 2010 年、イタリアの原風景に感化され生まれた「起源」シリーズが、今の三原さんの位置付けを決めた作品 群ではないだろうか。メトロポリタン美術館への初収蔵やニューヨークでの初個展など、三原さんが世界の表舞台に 躍り出た作品群であり、その一方で、国内での評価も同じく高まることに。「起源」は 2008 年の茶湯の造形展大賞受 賞から日本陶磁協会賞の受賞へと繋がり、その力強い直線や規律性、そして青銅器のような面持ちは瞬く間に完売と なった。

「景」2015年  H55.5 x W30.5 x D42.5 cm
メトロポリタン美術館収蔵

2010 年〜 2013 年の「鼓動」で静から動の意識が高まり、寂びた色調から明るい土味へと変わった三原作品は、2013 年〜 2017 年に発表された「景」で大きな転換を迎えることに。

器の概念を削ぎ落とし、より自由な造形を意識し始めたのである。結果、三原造形の可能性が広がり、作品が舞うよ うに立ち上がり、「景」の華やかな躍動感と鮮やかな景色に世界は驚いた。そして二作目のメトロポリタン美術館の収 蔵をはじめ、ドイツやフランス、そしてスイスなどのパブリックコレクションにも作品は加わり、「景」の勢いは止ま ることを知らず。しかし、2017 年のシンガポール個展を経て突如、「景」を後にした三原さん。どれほど評価の高い 作品群であっても、未練なく置き去りにする。作品が水鏡であるならば、変化こそ必然であり、何よりも自然なこと。 そう、季節の移ろいのように、そして川の流れのように。

2018 年より「久遠」を発表した三原さん。より円熟味に満ちた三原造形がこの作品群に見られた一方、造形の多様性 に限界を感じた三原さんは躊躇わず、新たな造形の道を 2019 年末より模索し、この度。初公開となる「醒」へと繋がる。

はじめて「醒」のプロトタイプを見たのが昨年末のこと。新シリーズが生まれる度にいち早く出雲へ駆けつけ、その 瞬間に立ち会ってきた。そのため、三原さんの産みの苦しみも間近で感じ、新作の生まれる瞬間も、そして作品群の の終焉も、立ち合わせてもらった。

ただ、今回の作品群は今までの苦しみや不安は霧消と化し、三原さんのなかで一つの夜明を感じる。三原さんが再び 大きな壁を乗り越え、吹っ切れた、と直感的に思う。いや、吹っ切れたというよりも、三原さんの造形に「喜び」が、 作品の中から弾けるように溢れていたのだ。直線と曲線の連動性、景色のバリエーション、そして三原さんの代名詞 とも言える「青」の深さと立ち上がりの美しさ。すべて兼ね備えた「醒」。作家の往年の名作を超える予感は、私だけ のものだろうか。三原さんのなかに、確かなる覚醒がここから始まる。

酉福ギャラリーから数えて 15 回目の個展となる「醒」。海外の個展やアートフェアを含め、作品の発表は 100 を超え る気がする。ロンドン、パリ、ニューヨークからマーストリヒト、ハイデルベルグ、シンガポール、そしてシドニー。

三原さんと奥さま、今まで素敵な旅路をご一緒させていただき、心より感謝申し上げます。 土の記憶を頼りに、そしてまだ見ぬ景色を求め、土と静かな対話を続け、自我を映し出す三原研さん。これからも時 流のなかで作品は生まれ、過ぎ去り、そして、あなたへと繋がる。

ア・ライトハウス・カナタ ・オーナー・ 青山和平(三原研「醒」記念冊子 序文より)

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