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響(きょう)—三原研 個展

2025 11/20 (Thu) – 12/6 (Sat)

会期:
2025年11月20日(木) – 12月6日(土)
11:00 – 18:00、日・月・祝祭日 休廊
*最終日は16:00まで

会場:
ア・ライトハウス・カナタ 表参道

作家在廊日:
11月 20日(木)、21日(金)、22日(土)

A LIGHT HOUSE CALLED KANATA A LIGHT HOUSE CALLED KANATA

迷い猫

 

先日から家の周りをうろついていた子猫が居着いた。

まだ小さなキジトラで可愛い。

生まれてひと月かふた月だろう。

つい餌を与えたのが習慣化してしまった。

 

新しいシリーズ作品が始まる時、

そのアイデアは迷い猫のように突然に訪れる。

心が動き、火種となる。

その火を絶やさぬように少しずつ育ててゆく。

しかし犬のように従順ではなく気まぐれで、右往左往しながら寄り添う。

やがて、街角を曲がる子猫は振り返り私をうながす。

 

こちらだと。

 

そこには長らく待ち望んだ

まだ見ぬ景色が広がっていた。

 

抱き上げた子猫は手に温かく、

そのぬくもりは心を溶かす。

 

三原 研

 

 

 

響け、土の詩。

水の如し、時は無窮なり。川は海へ、海は空へ、雨は大地へ。そして雪解けとともに、川はまた海へ帰る。出雲の三原研さんの作品には、この自然の摂理とも云える普遍性が底流に流れ、その静かな佇まいの中で過去と未来が一つとなる。

「ゆく河の流れは絶えずして、もとの水にあらず」と、あるギリシャの哲学者は云った。

過去の自分はもはや現在の自分でもなく、未来の自分でもない。時の中で人は変わり、三原さんも変わる。そして三原作品も同じく、季節の移ろいに似た摂理のなかで変化に富む。変化は必然であり、何よりも「自然」なこと。ただ、その稜線に内在する精神性に変わりは無い。10年前の三原作品も、10年後の三原作品も、そして今、目前に広がる15点の新たな景色も、一目で三原さんの作品であると分かる。それもそのはず。作品こそ、三原さんの心を映す水鏡である。

この度、はじめての発表となる三原さんの最新シリーズ「響」までの旅路を、ともに辿ることにしよう。

200702010年、イタリアの原風景に感化され生まれた「起源」シリーズが、今の三原さんの位置付けを決めた作品群ではないだろうか。メトロポリタン美術館への初収蔵やニューヨークでの初個展など、三原さんが世界の表舞台に躍り出た作品群であり、その一方で、国内での評価も同じく高まることに。「起源」は2008年の茶の湯の造形展大賞受賞から日本陶磁協会賞の受賞へと繋がり、その力強い直線や規律性、そして青銅器のような面持ちは瞬く間に完売となった。

201002013年の「鼓動」で静から動の意識が高まり、寂びた色調から明るい土味へと変わった三原作品は、201302017年に発表された「景」で大きな転換を迎えることに。

器の概念を削ぎ落とし、より自由な造形を意識し始めたのである。結果、三原造形の可能性が広がり、作品が舞うように立ち上がり、「景」の華やかな躍動感と鮮やかな景色に世界は驚いた。そして2作目のメトロポリタン美術館の収蔵をはじめ、ドイツやフランス、そしてスイスなどのパブリックコレクションにも作品は加わり、「景」の勢いは止まることを知らず。しかし、2017年のシンガポール個展を経て突如、「景」を後にした三原さん。どれほど評価の高い作品群であっても、未練なく置き去りにする。作品が水鏡であるならば、変化こそ必然であり、何よりも自然なこと。そう、季節の移ろいのように、そして川の流れのように。

2018年より「久遠」を発表した三原さん。より円熟味に満ちた三原造形がこの作品群に見られた一方、造形の多様性に限界を感じた三原さんは躊躇わず、新たな造形の道を2019年末より模索し、2024年とここ数年、最も長く続いた「醒」シリーズへと繋がる。

はじめて「醒」のプロトタイプを見たのは2019年末のこと。新シリーズが生まれる度にいち早く出雲へ駆けつけ、その瞬間に立ち会ってきた。そのため、三原さんの産みの苦しみも間近で感じ、新作の生まれる瞬間も、そして作品群の終焉も、立ち合わせてもらった。

2021年の個展に並んだ15点の「醒」は、今までの苦しみや不安は霧消と化し、三原さんのなかで一つの夜明けを感じた。三原さんが再び大きな壁を乗り越え、吹っ切れた、と直感的に思う。いや、吹っ切れたというよりも、三原さんの造形に「喜び」が、作品の中から弾けるように溢れていたのだ。直線と曲線の連動性、景色のバリエーション、そして三原さんの代名詞とも言える「青」の深さと立ち上がりの美しさ。しかし、始まりは終わりへのプロローグでもある。

すべて兼ね備えた「醒」は、202310月に行われたNYでの25周年個展で最終形を迎え、造形という旅路の果てに、一つの終焉も迎えた。そして2024年の後半、「醒」の終わりとともに、新たな三原造形が誕生した。その名は「響」。

あの「景」シリーズのように、高台が消えて無くなる今シリーズ。まるで壁のようなアール型の動きを軸とし、ファサードと内面が表裏一体となり、外側と内側の境を無くした。一見して三原作品のなかでも、最も「建築的」と言える作品群に思える。新たなシリーズの誕生を今回もカナタにて発表できることは感慨深く、喜びもひとしおである。

このシリーズがこれからどのような変化に富み、変わっていくのか。三原さんはすでに新たな形への「想い」を抱いているに違いない。三原さんの美の創造は、四季の移ろいと同じである。年月という名の長き大河が流れ続ける限り。そして、命ある限り。

土の記憶を頼りに、そしてまだ見ぬ景色を求め、土と静かな対話を続け、心を映し出す三原研さん。これからも作品は時の流れのなかで生まれ、過ぎ去り、そして、あなたへと繋がる。

あらためて、この度の三原さんの新作発表を心より祝し、大いなる想いを馳せて。

ア・ライトハウス・カナタ

青山和平

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