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万物流転 佐藤健太郎

Art Fair Tokyo 2024

2024 3/7 (thu) - 3/10 (sun)

VIPプレビュー:
2024年 3月 7日 (木)
11:00 - 19:00

一般会期:
2024年 3月 8日 (金) - 10日(日)
11:00 - 19:00、最終日は17:00まで

作家全日在廊

会場:
東京国際フォーラム、ホールE / ロビーギャラリー
東京都千代田区丸の内3-5-1

ブース:S017

A LIGHT HOUSE CALLED KANATA A LIGHT HOUSE CALLED KANATA

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人生は短い。しかし、宮城県石巻市出身の佐藤健太郎さんの話は長い。そんな佐藤さんとの出会いも、いわば偶然であった。いつ、どこで、誰と出会うかわからないもの。佐藤さんとの出会いも同じである。出会った当時、カナタにはまだ二人の平面作家しか所属していなかった。元祖・カナタの平面アーティストは朝倉隆文さん。作品もさることながら、そのカラオケでの美声で私の父の目に留まり、2006年頃から長きに亘たりお付き合いをさせていただいている。そして二人目の平面作家である三鑰彩音さんは、一年間しか勤めなかった元社員が多摩美の学園祭で出会い、2016年にご紹介いただいた。カナタの作家は、殆どがこのような偶発的な出会いから生まれたお付き合いが多い。

三鑰さんと出会った翌年。三鑰さんから一枚のDMちらしが届いた。第40回 東京五美術大学連合卒業・修了制作展の案内であり、三鑰さんとその同期など、大勢の学生が出品されるグループ展であった。そして、三鑰作品の隣に掲載されていた作品を見た瞬間、思わず心が奪われた。今まで見たことのないようなスケール感とミステリアスな雰囲気は鮮明に記憶している。その作品は佐藤健太郎さんの「雨音ノ余韻」(2016年)であった。

深い雲々が雪解けするかのように花開き、満天の空へと変わり行く様を捉えた作品、「雨音ノ余韻」。佐藤さんは大自然や宇宙に象徴されるような壮大な世界観を映しつつも、独自の抽象表現をされていると一目で分かった。スケールの大きさを学生の頃から挑まれていることに驚いたのと同時に、何よりも、作品は理屈もなく美しかった。説明も何も要らない。ただただ、美しかった。この作家に会ってみたい。単純にそう思った。

 

「雨音ノ余韻」が私と佐藤さんを繋げてくれた架け橋となった。また、佐藤さんのキャリアの中でも一つのエポック的な作品となり、はじめてお客さまの手へ渡った記念すべき最初の佐藤作品も、この「雨音ノ余韻」であった。作家自身、そのことについてこう述べられている。

 

雨音ノ余韻 (2016 年)
岩絵具、水干絵具、金属箔、金属泥、三彩紙、パネル
H182 x W364 cm

“より本質を対象に迫りたいとの想いから、水を多用して筆で描くだけでなく墨の流動性や緑青などの偶発性がもたらす形象を画面に落とし込み、抽象的な表現にシフトしていくきっかけとなったのが「雨音ノ余韻」。この作品が巡り巡って青山さんの目に留まり、お声がけいただくことに繋がったことは本当に幸運で感慨深い。また、実はこの作品を当時、唯一評価してくださった大学時代の恩師・中野嘉之さんが昨年10月にお亡くなりになり、より思い入れの強い作品となった。”

 

佐藤さんと水の表現。切っても切れないこの契りは奇しくも3.11から始まった。東北出身の佐藤さん。ちょうど多摩美術大学に合格し、上京して住む場所を探していた最中にご家族が被災されたのだ。あの惨劇のあとを地元で目の当たりにし、水や自然界に対する畏怖の念が作家の中に芽生えたと聞く。

 

“水の表現を追求するきっかけとなった作品が「深碧の流光」(2011年)。こちらは震災があった年に、夏に開催予定だった高校のOB・OG展で「広瀬川を描く」という企画がすでに決まっていて、5月に帰省した際にその取材するにあたりどうしても海の方には足が向かず、山の上流に向かうことにした。そこで見た景色は、当時の自身の心境では考えられないほどに素直に美しいと感じた。水の持つ「残酷さや恐怖」と「恩恵と美しさ」という二面性を、身を以て体感したことで、人生を賭して一貫して追求してゆこうと考えに至るきっかけとなる作品となった。”

20代の佐藤さんは、当時から他人とは明らかに異なる死生感と覚悟を持って作品作りに挑んでいたのではないか。その為か、佐藤さんの作品は既に初期の頃より一切の迷いもブレも屈託もない、一本筋が通った一貫性を含んだ美意識を持っていた。そして、作品にはある種の純朴とも呼ぶべき尊さも内在するように思えた。

深碧の流光 (2011 年)
岩絵具、水干絵具、箔、金属泥、高知麻紙、パネル
H120 x W229.3 cm

高校時代から描き始めていた動物をモチーフにした作品も同じである。

“特に地元の山で飼われていた羊をよく取材に訪れ、そこで感じたものや自分の想いなどを、羊の姿に託して表現していました。当時震災を経て、それでも地元から離れて過ごす自分が何を表現していくべきなのかと考えた際に、「自然」や「水」の存在について常に問いかけ表現していくことが、自分にできる唯一のことなのではないかという思いに至った。その中で「水の表現」と並行して「動物」も描いてきましたが、やはり自分の想いだけを中心に表現することや偶像的にパッケージングされていくことに対し、それはどこか盲目的な行為であり、ある種とても暴力的な行為なのではないかとも考え、より水の表現を追い求めていくことになった。”

表現を探求する中、佐藤さんが「水のある風景画」から脱却するきっかけとなった作品が「水の流れと身の行方」(2013年)である。水の流れに特化することにより、常に形を変容させていく水そのものを表現し、それまでの即物的な表現からの脱却、そしてより自由に対象を捉える手法となり、佐藤さんにとって記念すべき作品となった。やがてその作品は私と佐藤さんを繋げてくれた「雨音ノ余韻」(2016年)を生み、そして佐藤さんの最も大作である、修了制作「天ツ水」(2017年)へと繋がった。「天ツ水」では、屋久島で対峙した「自然」のスケール感に感化し、それを作品で表現するため、4mを超す力作となった。水の流れが生み出す流れにより、次から次へと、作品が繋がる。まさに、万物流転と云えよう。

水の表現を可能にした技法こそ、俵屋宗達が編み出した溜込(たらしこみ)である。水をふんだんに使い、墨や岩絵具を絹本や和紙の上を走らせ、その滲みにより動き、深み、そして変化をもたらす。主に背景などによく使われるこの伝統的な日本画の技法を、佐藤さんは名脇役から主役へと昇華させた。群青や墨、そして緑青が煌く圧倒的な佐藤さんの極光は、溢れんばかりの水を用いて生まれくる景色である。その岩絵具の粒子は粗く、光の乱反射で燦然と輝くのだ。

 

水を得た魚。佐藤さんは大学で溜込と出会い、その技法を手に、卒業後は教員として伊豆諸島の式根島へと拠点を移し、新たな生活で海と再び対峙することになる。

“卒業後は、震災以降なかなか足の向かなかった海という空間に対して、それに囲まれた場所に自分自身を置く中でどう感じ変化していくのかという点も含めて2年間過ごし、そして島の暮らしの中で強烈に感じた壮大な「宇宙観」や「風」の存在感は後の「風ノ形象」シリーズへと続く大事な体験となった。「風」は波を起こし、島を削り、砂を運び、悠久の時を重ねて地球上の万物を創造たらしめる存在であると強く感じた。”

水の流れと身の行方 (2013 年)
岩絵具、水干絵具、箔、金属泥、典具帖紙、金地屏風六曲一隻
H172 x W347 cm

そして私は、島での生活を始めた佐藤さんと出会い、カナタでの活動を経て、次々と新作が生まれた。「雨音ノ余韻」をベースに、群青の青の青さ、その紛れもなき美しさを追求した静寂シリーズ(2018年~)は、ただ単に私自身が、佐藤さんの青い作品が見たいという願望から生まれた作品であり、あっという間に佐藤さんを代表するベストセラーとなった。そして黒のCélesteシリーズ(2018年~)、翠の静謐シリーズ(2019年~)、赤など四季の色彩を含んだ至点シリーズ(2020年~)など、多くのファンの記憶に刻まれる名作を残してきた佐藤さん。そして新作が完成する度に、佐藤さんのテーマが徐々に「水の表現」から「宇宙の表現」へと変わり行くように思えた。

佐藤作品の魅力とは、独自の水の表現、宇宙の表現、そして自然界の表現から成るものではないだろうか。どんなにも混沌として希望の乏しい時代であっても、人類は満天の夜空に心奪われ、思わず立ち尽くし、美という共通の想いを経験してきた。時代が違えども、人種や言語、宗教が違えども、人は同じく感動する。私たちの祖先も、そして私たちの夢をこれより継ぐ人々も、また私たちのように、同じ空を眺め、感涙するであろう。そして神々が宿る夜空に、己の存在の意味を知る。佐藤さんの作品は、遥か太古と未来の人々の想いを汲む力、そして繋げる力があるように思う。これも万物流転である。Everything flows.

来る2024年3月。アートフェア東京にて、佐藤健太郎さんの個展「万物流転 Everything Flows」を開催する。作家と知り合って7年。佐藤さんはカナタを代表するほど人気な作家へと成長された。人気もさることながら、その実力も一つのエポックへと向かわれている気がする。20代で出会った好青年はいつしか実家・石巻へ拠点を移し、素敵な奥様と娘さんにも恵まれ、まさに前途洋々である。こころより嬉しく思う。その集大成とも言える個展を篤とご覧あれ。

 

ア・ライトハウス・カナタ

青山 和平

天ツ水 (2017 年)
岩絵具、墨、金属泥、太鼓鋲、樹脂、三彩紙、
パネル天蓋部分:金属箔、ビニールシート
H484 x W455 x D150 cm

そして末筆ながら、佐藤さんよりお言葉を。

“ 私の作品の表現も「水」からより「大気や空気感」のようなスケールの広がりを感じる表現へと繋がってきた。その中で、海外での発表で国境や人種を越えて作品をご覧いただき、様々なことを自由に感じ取っていただき、そこに新たな対話が生まれていくことは、私自身にとっても大変喜ばしい。これまで水を使い、親和性の高い日本画の画材を用いながら、「水」の表現を追求してきた。常に自分の身を以て体感したものを表現することを信条に、日本人の持つ「自然観」を大切にしながら、作品との対話を通して制作に取り組み続けたい。これからも私の大きなテーマである「水」のように、自分自身も常に変化を恐れず、新しい表現に挑戦してまいりたい。”

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