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Biography

尾崎悟 Satoru
Ozaki
Satoru
Ozaki

一期一会 (2014) |ステンレス鋼
W48 × D38 × H114 (cm)
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尾崎悟
Profile
  • 1963 東京都出身
  • 1988 東京藝術大学工芸科卒業
  • 1990 東京藝術大学大学院修士課程修了(鍛金専攻)
  • 終了制作「泉」東京芸術大学芸術資料館に買い上げ
  • 1993 東京藝術大学大学院博士課程後期課程修了
  • 01 Exhibitions More
  • 02 Awards More
  • 03 Public Collections More

About
the Artist
About
the Artist

星が見える野外のバーで、尾崎さんが静かに語ってくれた言葉は今も忘れられない。「100年後、国宝となる作品を作りたい。」ただ単に「国宝」という肩書を求めて発した言葉ではない。尾崎さんには傲りなんて微塵もない。それより、命を削るほど研ぎ澄まされた尾崎作品は「いま」という概念のなかに存在するものでは無いからである。今まで、そしてまだ見ぬ未来を結ぶ大きなしめ縄のような存在であり、目前に存在していても、実は此処に在らず。国宝とは、あと先にも生まれくる事の無き存在、すなわち、時空を結ぶものである。そして尾崎さんの作品こそ、真に時空の「結び」となる存在である。

尾崎さんはギャラリーとのお付き合いはほぼ皆無であった。そもそも、画廊を一切信用してなかったと聞く。ただ蓄えもなくなり、尾崎さんは困り、大学の先輩である小山登美夫さんへ相談をされたと聞く。「和平くんは?」と小山さんは勧めてくれた。和平?どこの馬の骨かも知らない無名な私。尾崎さんは疑念を抱いた。ただ、数ヶ月後に再び私の名前を聞くことに。予ねてより食器を下ろしていたあるフレンチの名店の主人も、同じく私を推奨されたのだ。立て続けに勧められ、尾崎さんは奮い立ち、酉福の門を叩いた。
ただ実は私も、尾崎さんを知らずにも、いつか尾崎さんと出会える日をただただ、待ち続けていたのだ。当時の酉福は深見さんや田中さんのように、大きなスケールで現代アートに挑める抽象表現の金属作家は一人もいなかった。だからこそ、事務所内でいつも横に座る砂原に向かって、彼女の耳にタコができるほど、ぶつぶつと「素敵な抽象の金属作家に会いたいなー」と呟いていたのだ。

そしてある日、突然、尾崎さんが現れた。一瞬にて、「待ち人、来る」と思った私。確かに、これで一つの「結び」が成立したと思う。しかし、いま、振り返るとある事に気付く。あれは出会いでもなんでもない。私と尾崎さんは運命の必然として、出会うべきして出会った。そしてあれは初対面でもない。前世にて、そして来世でも、私と尾崎さんは既に出会っていたのだ。円を描くように時空は一つとなり、尾崎さんと私は再び繋がった。
一つ一つの尾崎作品に紡がれるストーリー。一つ一つの鎚跡。作家がそこに居て、そこに生きた痕跡、証である。そして追随を許さない、世界一の磨き。映し出される実像と虚像の狭間に世界は揺らぐ。尾崎作品の稜線に、今も過去も未来もない。国宝? You must be joking. 尾崎さんの作品は人類の宝である。