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Biography

田中信行 Nobuyuki
Tanaka
Nobuyuki
Tanaka

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田中信行
Profile
  • 1959 東京都生まれ
  • 1983 東京芸術大学美術学部工芸科卒業
  • 1985 東京芸術大学大学院美術研究科漆芸専攻修了
  • 現在 金沢美術工芸大学工芸科教授
  • 01 Exhibitions More
  • 02 Awards More
  • 03 Public Collections More

About
the Artist
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2012 年秋。一睡もしないまま、直行便でロンドンから東京へ帰国し、降り立って直ぐに向かった先は東京近代美術館のオープニングパーティー。錚々たる顔ぶれが集まるなか、予ねてより憧れの存在であった田中信行さんの姿も。夜な夜な楽しい時が流れ、一次会、二次会、そして三次会へと夜は深まる。残った数名の学芸員や作家さんの間に、時差ぼけとは今も無縁の私。若さ故か、田中さんと熱く世界のなかの日本美術について議論した記憶がある。初めて会う人なのに、あの時思ったこと。「初めてとは思えない」、と。世界に対する視線。工芸という言葉に対するクエスチョン。日本の作家が向かうべき道。留めどなく話す田中さんに必死に喰らいつく私。あの時、試されていたのかな。
翌年、豊田市美術館で行われた田中さんの「漆の力」展。あれほど衝撃を受けた展示を見たことがなかった。田中さんの頭の中のスケール感に圧倒された。漆?工芸?現代アート?そんなの関係ない。田中さんは人と違う次元で戦を繰り広げているように見えた。いつの時代にも、先駆者は凡人を置き去りにし、ようやく追い着いたと思ったら、時すでに遅し。フロントランナーは立ち止まらず、もはや背中姿しか見えない。田中さんも同様。別次元の中にその好奇心も、その感受性も、その目先があり、電話で話しても、もはや意識は上の空。
負の遺産として残る西洋視点による固定観念の数々に、工芸という明治生まれの舶来の概念が今尚、正しく検証されないままに根付かせようという動きに首を傾げたくなる。しかし、工芸という言葉を根底から打ち砕き、西洋とは全く別の視点や文脈より生まれくる美術史の大切な1ページを刻み続ける田中さん。深見陶治さんが風穴を開け、その穴から壁そのものを木端微塵に。田中造形が持つスケール感、真美、思想はプラトン的な理想でもあり、時代という概念を超越した存在でもある。瞼を閉じれば、体内に眠る太古の記憶がいま、目覚める。