TOP PAGE

Biography

岸映子 Eiko
Kishi
Eiko
Kishi

岸映子
Profile
  • 1948 奈良県に生まれる
  • 1998 京都精華大学人文学部卒業
  • 2004 国際陶芸アカデミー会員
  • 01 Exhibitions More
  • 02 Awards More
  • 03 Public Collections More

About
the Artist
About
the Artist

あまり知られていないが、京都の岸映子さんとの付き合いは20年近くになる。父・光雅は早くから岸さんの作品に注目し、2004年、フランスの歴史ある陶芸誌に岸さんの記事を執筆し、その記事を伝って、岸さんの美意識が世界中の陶芸ファンに広まることになった。法律の大学院を出てまだ一年も経たない私。アートについての知識は趣味程度(趣味としての雑学は豊富であったが)。陶芸についても一切、皆無。「What’s a 窯?」のレベルであった。ただ、父の記事を読み、掲載されていた当時の岸さんの作品に大きな衝撃を受けたのと同時に、一目惚れした記憶は今尚、鮮烈に覚えている。

記事が出た直後、ある大役を父から任された。今も大切なお客様である秩父の「Nさん」をお連れし、京都の哲学の道近くにある岸さんのアトリエを訪問せよ、とのこと。単独での作家訪問の経験はまだ数えるほど。岸さんにお会いしたこともなく、Nさんとも初対面。現在は場数と修羅場を踏み過ぎて全く緊張しない性質だが、当時の私は24歳と初々しく、流石に少しは緊張した気がする。しかし、岸さんのユーモア溢れる優しいお人柄と、Nさんのダンディーなお人柄が素敵過ぎて、未熟が故の緊張がすぐに解れたのだ。あの夏、岸さんのアトリエ訪問は心から思い出に残るものであった。あれから20年。岸さんとNさんと今もお付き合いさせていただき、つくづく、私は幸せ者に思う。
さて、ここで父の記事を一部、拝抜させていただく。

「岸映子の作品を最初に見た時、その作品は空間にその力を誇示するように鎮座していた。まるで宇宙の星々が集まって星雲を作っているかのようだ。この造形物がどのように作られているかをもちろん知らなかった。だが知らないゆえに知りたいと私は強く思った。

聞くところによると、彼女の作品はまず想像する事から作り始められるという。作家が頭に思い浮かべた形が出発点なのだ。想像するがゆえに作品ありだろうか。その自分の形を実現する手段としての素材を彼女は必要とした。なぜなら、彼女の場合はその色、意匠、質感を含めて一つの形を作るものと考えているので、それにふさわしい素材をも求めたのだ。

普通、立体作品の表面は平面なので、表現の一環として色を付けたり、釉をたれ流したり、色々とすることがある。でも岸映子の作品はそうではない。彼女の特徴というのは平面が立体になっている。立体の作品だがその表面もまた立体になっている。そこが違う。表面の処理が奥行きをもっているのだ。つまり、石のようなシャモットが奥まで入っているので、表面から見えなくても丁度星が重なり合っているようなもので、奥までそれが続いているように感じるのだ。だからそれぞれの石片はそれぞれの色が付いていたとしても、重なり合う事によって限りなく白に近づくようにもなる。それがまた作品に立体感を与えるのだ。

岸の作品を見た人の多くは、こうした作品の奥にある何かを感じ取っている。造形力を生かす丁寧な作業は時間がかかるが、それだけ見る人を惹きつけることになる。深みが出るのだ。」 青山光雅 2004年筆。